1 00:00:00,000 --> 00:00:05,233 よし、昨日も旋削工程の設備使用率100%達成! 2 00:00:05,500 --> 00:00:09,400 段取りの見直しから始めて、やっとここまで来たなあ。 3 00:00:09,667 --> 00:00:16,100 加工数も以前は1日60個くらいだったのが、今では90個近くまで増えたし。 4 00:00:16,367 --> 00:00:19,567 さて、完成数のほうはどうかな? 5 00:00:22,567 --> 00:00:23,300 ……あれ? 6 00:00:23,567 --> 00:00:26,000 なんか、あんまり変わってないな……。 7 00:00:26,267 --> 00:00:35,700 えっ、平均60個? 旋削工程の加工数は増えてるのに、なんで仕上げの研削工程は増えてないんだ? 8 00:00:35,967 --> 00:00:40,733 すみません。旋削工程から来るシャフトの件なんですけど……。 9 00:00:41,000 --> 00:00:44,767 あ、加工数増えましたよね! どうですか? 10 00:00:45,033 --> 00:00:51,533 いや、それが困ってまして。研削待ちのロットが、どんどん増えてるんですよ。 11 00:00:51,800 --> 00:00:56,233 置き場が足りなくて、いったん別の場所へ運んでるんです。 12 00:00:56,500 --> 00:01:02,867 で、必要になったらまた取りに行って。ロットの順番も確認しないといけないし……。 13 00:01:03,133 --> 00:01:06,967 正直、前より手間が増えてるんですよね。 14 00:01:07,233 --> 00:01:10,200 えっ……。加工数を増やしたのに? 15 00:01:13,200 --> 00:01:14,833 こんなに溜まってたのか……。 16 00:01:16,833 --> 00:01:19,433 ずいぶん忙しそうな工場だね。 17 00:01:19,733 --> 00:01:26,933 そうなんです。設備をもっと動かせるように改善したんですが、なぜか現場から苦情が出ていて……。 18 00:01:27,233 --> 00:01:30,700 ふむ。君は何を良くしたかったのかね? 19 00:01:31,000 --> 00:01:38,567 生産性です。設備の稼働率を上げれば、工場全体の生産量も増えると思っていました。 20 00:01:38,867 --> 00:01:46,400 なるほど。では、君が上げた『稼働率』とは、そもそも何を表しているのだろう? 21 00:01:47,600 --> 00:01:50,500 まず、言葉を整理しましょう。 22 00:01:50,800 --> 00:02:01,367 この工場が稼働率と呼んでいたのは、設備使用率。計画した時間のうち、実際に加工していた時間の割合です。 23 00:02:01,667 --> 00:02:10,300 一方、工程負荷率は、工程が処理できる量に対して、どれだけの仕事を投入しているか。 24 00:02:10,600 --> 00:02:17,467 そして可動率は、設備が必要なときに正常に動けるかを表す指標です。 25 00:02:17,767 --> 00:02:22,400 同じ稼働率でも、何を測っているかで意味が違うんですね。 26 00:02:22,700 --> 00:02:31,367 言葉の使い方は工場によっても違います。だから、分母と分子を確認することが大事なんです。 27 00:02:31,667 --> 00:02:40,500 そして今の問題を考えるには、設備使用率だけでなく、工程全体の流れを見る必要があります。 28 00:02:41,700 --> 00:02:46,267 旋削工程は、1日何個加工していますか? 29 00:02:46,567 --> 00:02:49,233 最近は平均90個くらいです。 30 00:02:49,533 --> 00:02:52,233 では、研削工程は? 31 00:02:52,533 --> 00:02:54,200 平均60個です。 32 00:02:54,500 --> 00:03:00,600 あっ、そっか。研削工程で処理しきれない30個が毎日残るのか。 33 00:03:00,900 --> 00:03:09,000 そうです。この状態が続くと、5日間で追加の仕掛品は約150個になります。 34 00:03:11,000 --> 00:03:18,067 研削工程が工場全体の生産量を制約する、ボトルネックになっているんです。 35 00:03:18,367 --> 00:03:25,600 僕が旋削工程の加工量だけを増やしたから、後工程にどんどん仕掛品が溜まっていたんですね。 36 00:03:25,900 --> 00:03:29,267 では、次は何を改善するのかな? 37 00:03:30,467 --> 00:03:37,267 まずは旋削工程への投入を減らして、溜まった仕掛品を研削工程で消化しましょう。 38 00:03:37,567 --> 00:03:44,833 それから、研削工程が必要とする量に合わせて、旋削工程の生産を調整します。 39 00:03:45,133 --> 00:03:49,400 助かります。ロットの置き場や移動の手間が減りました。 40 00:03:51,400 --> 00:03:55,833 完成数は変わってないのに、工場の中のムダが減った……。 41 00:03:56,133 --> 00:04:05,667 ただし、ロットがまとめて到着するような変動がある場合には、平均投入量を合わせるだけでは不十分です。 42 00:04:05,967 --> 00:04:13,567 必要な仕掛品や能力の余裕を持ちながら、流れを安定させることが大切なんです。 43 00:04:13,867 --> 00:04:18,700 よい経験をしたね。では、次の工場へ行ってみようか。 44 00:04:19,900 --> 00:04:22,433 今度は自動車の組立ラインですね。 45 00:04:22,733 --> 00:04:26,600 このライン、時間稼働率が100%ですね。 46 00:04:26,900 --> 00:04:31,967 前の工場では、設備を動かしすぎないようにしたら改善しました。 47 00:04:32,267 --> 00:04:36,067 ここでも少し稼働を減らして、余裕を作りましょう! 48 00:04:44,067 --> 00:04:46,433 あれ? 6台も減ってる……。 49 00:04:46,733 --> 00:04:50,233 君は、何のためにラインを止めたのかね? 50 00:04:51,433 --> 00:04:55,500 このラインでは60秒ごとに1台ずつ流します。 51 00:04:55,800 --> 00:05:05,733 例えば、ある工程の標準作業時間が50秒なら、タクトに対する作業負荷率は約83%です。 52 00:05:06,033 --> 00:05:13,300 でも、設備が必要なときに正常に動ける割合は、100%を目指せます。 53 00:05:13,600 --> 00:05:19,000 作業時間に余裕を持たせることと、ラインを止めることは別なんですね。 54 00:05:19,300 --> 00:05:26,733 その通りです。前の工場では、後工程の能力を超える投入が問題でした。 55 00:05:27,033 --> 00:05:34,533 今回は、生産するペースを落とす理由がないのに、ラインを停止させてしまったんです。 56 00:05:35,733 --> 00:05:40,000 じゃあ、このラインでは何を改善すればいいんでしょう? 57 00:05:40,300 --> 00:05:45,067 例えば、車種によって作業時間が変わることがあります。 58 00:05:45,367 --> 00:05:48,200 この車種だけ、5秒間に合わない……。 59 00:05:48,500 --> 00:05:55,167 そこで作業の再配分や応援、作業方法の改善を検討するんです。 60 00:05:55,467 --> 00:06:00,833 なるほど、全体を止めるのではなく、作業の偏りを減らすんですね。 61 00:06:01,133 --> 00:06:10,733 それに、異常時には止めることも大切です。トヨタ生産方式の自働化では、異常を検知したら停止し、 62 00:06:11,000 --> 00:06:14,467 不良の流出を防ぐことを重視しています。 63 00:06:16,467 --> 00:06:23,900 ただ動かし続けるのではなく、必要なときに動けて、異常があれば止められるラインを目指すんですね。 64 00:06:25,100 --> 00:06:33,867 最初の工場では仕掛品が増え、次の工場では作業遅れが問題になった。共通していることは何だろう? 65 00:06:34,167 --> 00:06:38,967 どちらも、予定どおりに進まないことがある……。ばらつきですね。 66 00:06:39,267 --> 00:06:49,800 Factory Physicsでは、変動を吸収する代表的な手段として、在庫・能力・時間が整理されています。 67 00:06:50,100 --> 00:06:58,633 仕掛品で供給を安定させる。設備に能力余裕を持たせる。あるいは待ち時間を許容する。 68 00:06:58,933 --> 00:07:03,033 そのすべてを無駄だと取り除けば、どうなるだろうね? 69 00:07:03,333 --> 00:07:07,867 ばらつきを吸収できなくなって、工場が不安定になります。 70 00:07:08,167 --> 00:07:16,433 君は最初、稼働率を上げればよいと考えた。次は、下げればよいと考えた。今はどうかな? 71 00:07:16,733 --> 00:07:22,200 稼働率という数字だけを追っても、正しい改善にはならないと思います。 72 00:07:22,500 --> 00:07:29,000 大切なのは、何を測っていて、何が工場全体を制約しているかを知ること。 73 00:07:29,300 --> 00:07:34,633 そして、必要な製品を安定してつくれる状態を目指すことなんですね。 74 00:07:34,933 --> 00:07:39,433 では、君の工場は何のために動いているのだろうね?